法律事務所・事務員のコラム 「無理なく返せる」「家計への負担は最小限で済む」
初めまして。鈴木徳太郎法律事務所の事務員です。
今回より、このスペースで事務員コラムを担当させていただくこととなりました。
弁護士事務所の事務員は専門の法律家ではありません。
そこで、当コラムでは法律のプロの視点ではなく、もっと一般的な視点から法律問題について書いてみたいと思います。
初回のテーマは個人の債務問題についてのお話です。
「無理なく返せる」「家計への負担は最小限で済む」
借金の借入を勧めるチラシやCMなどで、そんなキャッチコピーを目にしたことはないでしょうか?
彼らは月々の返済額を小さくすることで家計への影響を最小限にできると主張しています。
本当に無理なく返せる、あるいは家計への負担が最小限で済むのなら素晴らしいことですが、それは本当でしょうか。
例えば、50万円を年利18.0%で借りたとしましょう。
これは債務としては決して大きな額ではありませんし、利率も法律で許された範囲に収まっています。
では、この借金の契約が持つリスクの大きさはどの程度でしょうか?
実のところ、この段階では正確な判断はできません。
月々の返済額が分からないからです。
借入額が同じであっても、毎月の返済額次第で最終的な支払額は大きく変わってきます。
そこで、50万円を年利18.0%で借り、月々2万円を返済していくと仮定しましょう。
この場合、完済までにどれだけ時間がかかるでしょうか?
答えは32カ月です。支払額は63万円ほどで、元本50万円に対して利息は約13万円となります。
お金を借りずに済ませていれば、この13万円は余分に使えたことになります。47インチのテレビを買ってお釣りが来る計算ですね。
そう考えるとあまり愉快な話ではないと思いますが、この程度であれば大きな問題はないと言えるでしょう。
「50万円貸してやるから、63万円返せ」という提案はそれなりに現実味があります。
ですが、月々2万円の返済というのはそれなりに大きな負担となります。
日々の煙草銭が失われる程度であれば「かえって健康になった」と言えないこともないでしょうが、もっと切り詰めた家計の場合にはそうも言ってはいられません。
そこで「無理なく返せる」「家計への負担は最小限で済む」という言葉に甘えてみることにします。月々の返済額を削ってみるわけです。
ここでは、50万円を年利18.0%で借り、月々1万円を返済していく場合を考えてみましょう。
返済額が減ったので、確かに家計は楽になったかのように思われます。
ですが、この場合には借金の完済までに93カ月かかります。7年と9カ月です。
この50万円を中学生になったばかりの子供の学費を補助するために借りた場合、その子供が成人した後まで支払は続くわけです。
合計の支払額は93万円ほどで、元本50万円に対して利息は約43万円となります。
この43万円は借金をしなければ自分で使えたわけです。
47インチのテレビなら4台買えたでしょう。置き場所が問題になりそうですが。
それに、50万円の借金に対する43万円の利子というのはどうでしょうか。
もっと言えば、「50万円貸してやるから93万円返せ」という提案は魅力的でしょうか。
最初からこの条件を提示された場合にお金を借りるのは、本当に切羽詰まった場合だけではないでしょうか。
これが「無理なく返せる」「家計への負担は最小限で済む」という言葉を真に受けてみた結果です。
確かに1カ月の負担は減りましたが、最終的には借りたお金の8割以上という大きな利息を支払うことになってしまいました。
この計算から、直ちに「月々の返済額を下げることは貸す側にとって有利である」とは言いきれません。
ですが、「家計に負担の出ない程度に返してもらえれば~」という言葉の裏に、貸す側の利益が隠れているのではないかと疑ってみるのは必要なようです。